2008年 04月 08日
妹が垣根 しゃみせん草の 花咲きぬ 与謝蕪村 薺は春の七草の一つで、秋に芽を出して1月下旬には開花し始めます。昔は冬の数少ない野菜として貴重なものだったようです。そのためか、江戸時代の博物学者貝原益軒は自署大和本草(やまとほんそう、宝永7年西暦1709年刊行)で薺を世捨て人のために天がもたらした贈り物と称揚しています。 薺の実が三味線のばちの形に似ていることから、ぺんぺん草とも呼ばれ、実が風に揺れて、しゃらしゃらと音をたてることからしゃみせん草とも呼ばれているとか。この写真でも下の方に特徴がある形の実が見えます。このように薺の花は実を結びながら上の方から次々と開花して行き、実が下の方に形成されて行くのだそうです。 荒地でも育つので、荒れ果てていることを ぺんぺん草が生えた と形容し、もっと酷くなると ぺんぺん草も生えない と言われます。 冒頭の句の中で、しゃみせん草が生えた垣根は過ぎ去った昔を示唆しているようです。記憶の中の女性は何処にいるのでしょうか。俳人は朽ち果てた彼女の家の前に立っていると言うより、己の過去と向き合っているのだと思います。それを表すのに妹が垣根と言うのはいかにも蕪村らしい、残り火のような青春の息吹を感じますね。 2008年3月28日 町田・薬師池公園 Minolta AF50/2.8 初期型
by hanmaondo
| 2008-04-08 19:04
| 植物
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